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遭遇、力持つもの(前編)
※このSSは『TW2シルバーレイン』と『TW4サイキックハーツ』のifストーリーです。
作者:D-1
出演:『TW2シルバーレイン』弥栄・迅b54111
『TW4サイキックハーツ』葛葉・有栖(d00843)
作者:D-1
出演:『TW2シルバーレイン』弥栄・迅b54111
『TW4サイキックハーツ』葛葉・有栖(d00843)
その廃工場は、事前の情報通り、都市部から離れた郊外にあった。
既に戦いは終わったが、ゴーストの存在自体が潰えたわけではなく、
有志の能力者が今も、「残党狩り」を行っている。
彼、弥栄・迅もまた、その有志の一人だ。
といっても迅は、戦いを離れるものも多い中で、
物好きにも戦場へ戻る選択をした。
使命感というよりは、緊張感を無くさないための運動に近い。
普段着で工場内を歩く。
一見、隙だらけにも見えるが、これで360度を警戒している。
それゆえに、「来客」の足音が微かに聞こえた刹那、
迅はまさしく名前の通りに、素早く物陰に身を隠した。
周囲から見つかりにくく、かつ自分からは周囲がよく観察できる位置だ。
十年以上も戦場に身を置いていれば、自然にできる動作である。
そして、上着の内ポケットから一枚のカードを取り出す。
(足音は……一つか。大物か、でなけりゃはぐれか──)
すぐにでもカードの力を解放できるよう、身構える。
足音は、すぐ近くまで迫っている──
「雰囲気、出てるなぁ……」
武蔵野郊外にある、打ち捨てられた工場でダークネスが発見された、という予言。
葛葉・有栖は、その情報を頼りに、工場を訪れていた。
今回はどういうわけか、自分一人のようで、少し居心地が悪い。
エクスブレインのはじき出したビジョンはノイズだらけだったらしく、
敵の詳細がわからなかったらしい。
「私一人っていうのも、なんだかおかしいなぁ」
一人ごちながら、廃工場の中を歩く。
何年か前までは、埃を被って眠っている機械たちも、
忙しなく働いていたのだろう。
兵どもが夢の跡──
ふと、足を止めて周囲を見渡す。
静寂だけが支配していた。
「さって……早く見つけなきゃ」
有栖は再び、工場内を歩き出した。
(なんだありゃ)
物陰から、「客」の様子を見ていた迅は、
高校生くらいの少女が現れたことに驚きと拍子抜けを同時に味わっていた。
(あの子がターゲット……なわけないよな。さて──)
視線を少女……有栖から外すと、足元に小さな影を見つける。
ネズミだ。
(おっと……騒いでくれるなよ。見つかりたくない)
しかし、そんな迅の願いを、食べ物をくれるわけでもないのに聞いてくれるネズミではなかった。
一つ、小さく鳴くと、ネズミは身を翻して走り去った。
置き土産に、傍らにあった空き缶を転がして。
(んげっ!?)
静寂が耳に痛くすら感じる中、派手な物音を立てて、
缶が転がる。
ややあって、
「誰!?」
有栖の声が飛んできた。
ネズミが逃げたのは、有栖に気付いたからではない。
そこに「何か」がいたから。
それから逃れるためだ。
「そこにいるのはわかってるんだから!」
有栖はそう呼びかけながら、スレイヤーカードを取り出す。
なお、呼びかけに応じない「何か」──迅に、痺れを切らした有栖が、武装を展開しながら、
彼が隠れている場所に歩み寄る。
「出てこないつもり……?」
相手の出方が伺えないのは不安だが、こちらから打って出ることにする。
それが一番手っ取り早い。
カードを額に軽く当て、目を閉じて念じる。
すると、カードが一瞬眩く光り、見る間に日本刀の形を成した。
「それなら、嫌でも出て来たくなるようにしてあげる……!」
呟くと、有栖は鞘から刀を抜き放ち、峰に触れ、撫でるように指を滑らせる。
すると、刀身が炎に包まれた。
「レーヴァテインッ!」
燃え上がる刀を上段に構え、そう叫ぶと有栖は迅が身を隠している瓦礫の山に向けて刀を振り下ろした。
地面に刀が触れると、さながら火のついた導火線のように、
炎が瓦礫に向かって走ってゆく。
(炎使い──ゴーストじゃあねぇな)
相手の正体がターゲットでないことを理解した迅は、素早く瓦礫を駆け上がると、懐からカードを取り出す。
「ドライブ」
そう呟き、カードを指で弾く。
跳ねたカードは空中で輝き、その形を一瞬でライフルのそれに変える。
重力に従って落ちてくるそれを、迅は慣れた手つきで掴むと、自らに向かってくる炎に銃口を向ける。
「参考までに教えとくが、炎じゃ俺は殺れないぜ」
そう言うと、銃口から流れ出すように氷の塊が現れる。
「え……!?」
銃の変化に驚きを隠さない有栖を尻目に、迅は炎を狙って引き金を引く。
冷気をまとった弾丸が数発、走る炎に飛び込む。
次の瞬間には、あっという間に炎が凍り付いてしまった。
「な、なにこれ……」
唖然とした顔で一連の推移を見ていた有栖は、思わずそうこぼす。
「言ったろ、炎じゃ俺は殺れないって」
改めて、ライフルを構え直し、迅は銃口を有栖に向ける。
「とてもゴーストにゃ見えないが、その力は厄介だな。ここで止めさせてもらおうか」
「あなたこそ、ダークネスじゃないわね」
有栖は有栖で、ターゲットがいる。
「でも、あなたの力も危険だわ。ここで倒す!」
そう告げて、日本刀を構えた。
「満場一致だな。さ、始めようぜ」
(……やりあってりゃ、騒ぎに釣られて「当たり」が出てくるかも知れないからな)
迅が内心で呟き、改めて有栖に視線を戻すと、
既に日本刀を振り上げ、切りかかろうとしている。
迎え撃つように、迅はライフルを有栖の刀に叩きつける。
日本刀とライフルによる鍔迫り合い。
火花が飛び散り、薄暗い工場を瞬間、照らし出す。
文字通り、火蓋は切られたのだった。
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プロフィール
HN:
葛葉・有栖
年齢:
29
性別:
女性
誕生日:
1995/09/16
職業:
武蔵坂学園所属灼滅者
自己紹介:
葛葉・有栖(d00843)
TW4「サイキックハーツ」のキャラ。
ファイアブラッド×殺人鬼の18歳
今は日本刀使い
========================= このブログ内の作品は、株式会社トミーウォーカーの運営する
『サイキックハーツ』の世界観を元に、
株式会社トミーウォーカーによって作成されたものです。
イラストの使用権は作品を発注した葛葉・有栖(d00843)に、
著作権は各絵師様に、
全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します。
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